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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)766号 判決 1960年10月04日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人和久井宗次の上告理由第一点について。

商標法二条九号の関係では、当該登録商標が周知・著名のものであることは同号適用の要件ではなく、その適用を肯定するためには、商標自体が同一若しくは類似する場合でなければならないことは所論のとおりである。しかし、原審も、商標が周知・著名であることが九号適用の要件であるとしたものではなく、また、「シンガー」の商標と「シンカ」の商標とが商標自体として同一若しくは類似のものと認められないにかかわらずその適用があるとしたわけではない。原審は右両商標の呼称を抽象的に対比すれば(すなわち「シンガーミシン」がその呼称で世界的に著名な裁縫機械として取引されているという具体的取引事情をはなれて抽象的に比較考察すれば)必ずしも類似するとはいえないかもしれないが、右のような具体的取引事情を背景として考えれば、「シンガー」と「シンカ」は紛らわしいこととなり、結局、具体的取引事情の下では、両商標は呼称が類似するものと認むべきである、との趣旨の判断をしたものである。原審の右認定は相当であり、右認定が経験則に反するとはいい得ない。

なお原審認定の事情の下では「シンカ」の商標は九号に該当すると同時に一一号にも該当することとなるが、九号と一一号との競合的適用を否定すべき理由はない。所論引用の判例は、商標の呼称が類似するかどうかを判断するについて具体的取引事情を考慮に容れてはならない趣旨を判示したものとは解されず、また、同一事実につき九号と一一号の競合的適用があることを否定する趣旨とも解されない。それ故論旨はすべて理由がない。

同第二点について。

所論のような登録例がある以上本件両商標の類似性を否定しなければならないというような経験則は存在せず、これら登録例の存在は本件両商標の類似性を肯定することの妨げとなるものではないから、原審がこれら登録例の存在にかかわらず、本件の具体的事情の下で右両商標の呼称が類似すると判断したことは何等違法ではなく、所論の甲号証を排斥する理由の如きは必ずしも説示しなければならないものではない。

同第三点について。

所論は、論旨第一及び二点と同一趣旨に帰する。その採用できないことは上述のとおりである。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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